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(3)問題点3:普段の業務において使う計画になっていない
市町村等では、防災主管課や一部の課を除いては、平常時にはほとんど地域防災計画を使用していないという状況が幅広く存在している。このような状況が存在する理由は色々考えられるが、結局のところ、「そのような状況であっても今までは問題なくやってこられた」というあたりが関係者の本音であろう。この傾向は、過去に大きな災害を経験していない市町村等に強い。その当然の帰結として、これらの市町村等の地域防災計画の多くが、「・・…するものとする」といった具体性のない訓示的記述になっている。
これまで問題なくやってこられたのはたまたま運が良かったに過ぎないということ、また、そのような平穏な時期にこそ実施可能で、かつ実施しておくべき「安全・安心な街づくり」のための予防対策が多数あるということに、前述の市町村等は気づいていない。「安心・安全な街づくり」は一朝一夕には実現しないが、少しでも早く実現するには、防災主管課や一部の課にのみ防災対策をまかせるのではなく、各課が行う日々の業務、日々の施策の中に「安全」や「安心」を織り込み、それを10年、20年と一積み上げていくことが必要である。厳しい財政事情の下では、時間を味方にしたこのような総力的な取組こそが対策の本道といえよう。そのためにも、災害予防計画は全課が普段から使う(使える)ものになっていなければならない。
また、これをより確実なものとするため、災害応急対策計画の中に示されているような災害対策本部の「事務分掌表」をまねて、平常時の「災害予防事務表」を作成することも検討に値すると考えられる。
(4)問題点4:重要度・緊急度の視点から予防対策が整理されていない
重要度・緊急度の視点からの対策の整理は、概括的には「総則」の防災ビジョンにおいて示されるが、より具体的には災害予防計画や災害応急対策計画の中で整理される必要がある。言い換えれば、防災ビジョンを踏まえながら、種々ある予防対策のどれを重視しどれから着手するべきかを整理し、計画の中に位置づける必要がある。
しかしながら、多くの地域防災計画は各課、各関係機関から提出された個別計画(予防対策)案をそのまま束ねただけの性格が強く、個別計画(予防対策)相互の重要度や緊急度の比較はされておらず、メリハリのないものになっている。
今後の災害予防計画では、阪神・淡路大震災の教訓から以下の例に示すような予防対策に高い重要度・緊急度を与えるべきと考えられる。
(例)
・老朽住家対策
理由:倒壊により膨大な数の死傷者が発生した
・防災基幹施設対策
理由:市役所、避難所、病院、警察署、消防署、消防水利、道路など防災上重要の施設が大きな被害を受け、防災活動に大きな支障を来した
・行政機関以外(住民、事業所、各種ネットワークなど)の防災体制の整備理由:行政機関だけでは大災害には対応できないことが改めて明らかになった
・発災後の応急対策活動に備えた体制・設備の整備
理由:発災後の危機管理体制が問題となった
(5)問題点5:応急対策需要の主要発生源である住家被害対策に具体性が乏しい
阪神・淡路大震災の重大な問題・教訓の一つは、多数の住家が損壊し、膨大な数の死傷者を出したということである。

 

 

 

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